生きた音を届けよう2021/03/31

「お待たせしました○○は軽くほぐしてからこちらの××を振りかけてそちらに置いてあるソースの中からお好みのものをこちらの小皿にとってお料理につけてお召し上がりくださいソースは左から□、△、◎ですごゆっくりどうぞ」

テーブルに料理が運ばれてきたので
ワクワクしていると、店員さんが、
「これでもか!」ってくらいの早口で
マニュアル化された説明を
小さめの声で無機質に一方的に喋り、
料理を置いて去っていった。

「え?え?…何?
ほぐす?ソースが何だって?」

何を言っていたのかさっぱり聞き取れず、
きょろきょろアタフタ。
店員さんとしては、決められた仕事を
こなしただけなのかもしれないけれど、
”適当に扱われた感”が否めない。

皆さんは、こんな経験ないだろうか?

決められた説明文を丸覚えし、
一語一句、間違えたりつっかえることなく
まるでタイムでも競っているかのように
一気に発するこの行為。

言っている内容はもちろん正しいし、
言葉遣いもおかしなところはない。
食べ方もちゃんと教えてくれているし、
数種類からソースだって選べちゃう。
本来なら、「なるほど~(*´▽`*)
じゃぁ、どれにしようかな~?」と、
お客さん側を楽しい気分にさせる説明なはず。

ところが、だ。
この行為といったら
楽しい気分にさせるどころか
マイナスな印象を与えてしまうあげく
伝えたい内容もまったく伝わっていない。

つまり、これは
「相手の存在を無視した単なる作業」
になってしまっている、ということ。
言葉として発せられてはいるけれど、
これらは意味を持たない
「死んだ音」なのだ。

***

実は似たようなことが
ピアノの演奏でも起こっていたりする。

・何度も弾いたので、もう覚えています
・楽譜通りに弾いています
・書いてある音を正しく鳴らしています
・なんなら速く弾くことも可能です

最初から終わりまで鍵盤を見つめたまま、
間違えたりつっかえることなく
一心不乱に一気に弾き切る行為。
呼吸も間合いもあったもんじゃない。
ピアノで演奏することが、
「音楽を奏でる」というよりも
「入力作業」のようになっているケース。
(※テクニック系の練習曲の場合は、
「入力作業」に近いこともあります)

そこにあるのは、
次々と生み出される「音の羅列」だけで、
単なる音の集合体でしかない。
作曲者の想い、楽曲の持つ雰囲気、
伝えたいイメージなど何も無いし、
聴き手に届けようとする意識もない。

私は、音楽を奏でることは、
自己表現のひとつだと思っている。
感情をはじめとする
様々な想いやイメージを
楽曲を通じて「表現」しているのだ。
それは決して、
単なる音の羅列であってはならない。
間違えずに正しく弾けたかどうか、が
最も重要ということでもない。

私たちが素晴らしい演奏
(上手い下手に関係なく)を聴いた時に、
感情が揺さぶられ鳥肌が立ったり、
自然と涙が溢れたり、
心が温かくなったりするのは、
弾き手と聴き手、双方の間に
一種のコミュニケーションのようなものが
存在しているからなのだ。

弾き手は「音」に命を吹き込み、
大切に、丁寧に、聴き手に届けようとする。
聴き手は全身でそれを浴びて、感じる。
「音楽」ってこういうものだと思う。


あなたの音は生きていますか?
相手の存在を無視していませんか?

***

この問いを、
Studio*ABE*の生徒さんにだけでなく、
あの店員さんにも投げかけたい!!
そう思わずにはいられない
ワタクシなのでした。(笑)

コメント

_ 高木 亜古 ― 2021/04/02 18:59

店員さんの話、私も経験ありますが店員さん側の経験もあります 料理の名前がやたらと長くて覚えるだけでも精一杯、一気に言葉にしていたと思います ピアノも譜面通りの音を指で押すだけでも相当の練習が必要で拍感とか音の切り方とか頭では指に指令を出しても指が答えてくれません レッスンで「音が鳴ってるだけですね」と言われるのは悲しいので指が答えてくれるまで頑張ります(^^♪

_ KIKKI ― 2021/04/04 11:24

自分にとってよほど簡単な曲でない限り、
譜面通りの音を指でなぞっていくだけでも一苦労ですよね。
「頭ではわかるけど指が追いついていかないよ~((+_+))」
という状況はよ~く理解できます。
少しでも指が動くようになってきたら、自分の出している音に耳を傾けること。
これがとっても大事です!
始めの段階では余裕がないかもしれませんが、
常に「こう弾きたい」「こんな風に仕上げたい」など、
音そのものや音楽全体の理想&イメージを持ちつつ
練習に励んでみてくださいね♪

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