手の痛みについて(2)2020/07/31

お待たせしました。前回の続き、
「手の痛みについて(2)」です。

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美しい音色、速いパッセージ、
かっこよくお洒落なサウンドに、
ダイナミックな響き…。

この時、ピアニストの指先は、
鍵盤の上を右へ左へ素早く動きまわったり、
和音を連続で弾いたりしています。
複雑な動きを超高速でおこない
繊細にコントロールし続けているわけです。
一見、優雅でしなやかに見える
「ピアノを演奏する」という行為ですが、
実は、普通に弾くだけでも
「筋肉や腱を酷使している」
といっても過言ではないのです。

***

手に痛みが出る時、大抵の場合は
『適切ではない状態で、弾き続けた』
が原因である、と、
前回の記事に書きましたね。

今の季節にジョギングをする際、
マスクをしたまま
長時間にわたり休まず走り続けること…
これはとても危険である、と
誰もが想像できると思います。
ピアノも同じです。
ただでさえ、
ピアノ演奏という行為そのものが
筋肉や腱を酷使しているにも関わらず
『適切でない状態で弾き続けること』
が、どれほど危険か…。

手(筋肉や腱など)にかかる負荷は
適切でない状態で弾き続けると
どんどん蓄積されていき、
やがて炎症を起こすようになり、
痛みとしてあらわれます。
その悲鳴を無視して
弾き続けた先にあるのが、手の故障。

つまり、腱鞘炎です。

「腱」はひも状の繊維組織で、
骨や筋肉を繫いでいます。
そして、「腱鞘」とは、
その腱が通るトンネルのようなもの。
これが炎症を起こしたり損傷してしまうと、
中を通る腱がスムーズに通過できなくなり、
擦れることによって、痛みや引っ掛かり、
という症状が現れるんですね。

一般的に腱鞘炎と呼ばれていますが、
「バネ指」「ドケルバン病」
という病名でも知られています。
※指を伸ばす際に引っ掛かるのがバネ指
※手首(親指側)に痛みが出るドケルバン病

「使いすぎ」が主な原因ですが、
実はそれ以外にもあるようです。
更年期や妊娠、出産期の
女性に発症が多いことから、
女性ホルモンの変動が関係している、
とも考えれられています。
朝の起床時に手のこわばりを感じたり、
手を握った時や伸ばした時に
痛みや違和感を感じて、
「ピアノで痛めてしまったのかも!」と、
決めつけてしまいがちですが、
一概にそうとは言えないんですね。

例えば、
「ピアノを弾くと指の関節が痛い」
これもピアノの弾きすぎが原因か?と
思ってしまいがちですが、
指の変形性の関節症である
「ヘバーデン結節」「ブシャール結節」
の可能性があります。
指先の関節や第2関節に痛みが出て、
やがて見た目にも変形していき
指が曲がってしまう病気です。

これらは40歳以降の女性に多く、
遺伝傾向がみられると言われており、
実は、私も痛みが出ることがあって、
少~しずつ変形が始まっています。(涙)
私の母は10本の指先がすべて
あらぬ方向にむいているので、
自分も覚悟はしていますが、
これといった確実な予防法もなく、
効果的な治療法もない疾患なので、
ピアノを演奏する者にとっては
ホントに恐怖です。(´・_・`)
同じような変形性の関節症では、
他に、親指の付け根に痛みのでる
「拇指CM関節症」というものもあります。

あとは、神経が手首で圧迫されて
しびれや痛みが出る
「手根管症候群」という病気もあります。
怪我やかつての骨折の経験が
発症の原因になることもあるようですが、
スポーツや仕事などによる「使いすぎ」
でダメージが蓄積されることが
原因となることも多いです。
そして、やはり更年期や妊娠、出産期の
女性に見られることもあるため、
女性ホルモンの変動も
発症に関係していると言われています。

そして、もう1つ。
いわゆるテニス肘(上腕外側上顆炎)。
これは肘の外側に痛みが現れる疾患。
物を持ちあげたり、手をひねったり、
という動作を慢性的におこなうことで
外側上顆に炎症が引き起こされて、
発症してしまいます。
テニスをする人によく見られますが、
「雑巾を絞る」などの動作も
同じ部分を使うので、
家事をしていてなることもあるようです。
加齢とともに腱が傷んでくると、
発症しやすくなるとも言われています。
そして、「猿うで」(わかるかな??)の人は
肘に負担がかかりやすく痛めやすいので、
注意が必要です。

ちなみに私、テニス肘もやってます。
(テニスはまったくできませんが…汗)
自宅の電子ピアノで
鍵盤の高さに対する椅子の高さの調整が
イマイチだったにも関わらず放置して
本気で数日、数時間の練習をしたら
あっという間にヤラレてしまいました。(涙)
「加齢」も否めないし、
「猿うで」の持ち主でもあります~。(;´Д`)

最後に。
近年言われるようになってきた
スマホやパソコン操作による手の疲労。
無自覚のうちに手首や指を酷使していて、
腱鞘炎になることもあるので、
長時間、スマホ、マウスをいじっている方は
要注意ですよ。

***

…っとまぁ、手に痛みが出る疾患を
次々と書いてきいましたが、
「もぅ~、今回も長いッ!」
という声が聞こえてきそうなので、
そろそろまとめます。(笑)


・『適切でない状態で、弾き続ける』は
手を傷める可能性大。要注意!

・そもそも”ピアノを演奏する”行為自体が
手を酷使してる状態なので、
手を傷めるリスクは高い、と自覚しよう!

・筋肉疲労、肩こり、腕のだるさを感じたら
フォームや姿勢、弾き方を見直して!

・痛みはピアノだけが原因とは限らない。
女性ホルモンの変動や遺伝の可能性も!

・原因は何であれ、痛みを感じたら
とにかく手を休めること!

・日頃の手指のケアとして、
ストレッチやマッサージはオススメ。
使いすぎちゃった、と思った時は
軽くアイシングするのも効果的。

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「ピアノを弾く者の視点から」
「私の知っている範囲で」となるので、
医学的な内容に関しては
もしかしたら間違いがあるかもしれません。
現在、もしも手に痛みなどがあり
このページをご覧になっている場合は、
きちんとお医者さんに診てもらってくださいね。


皆さんが、身体に無理なく
末長くピアノを楽しめますように…☆