手の痛みについて(1)2020/07/24

久々の更新です。
コロナのせいで筆がのらず、
(↑ということにしておこうっと)
書いては消し、書いては消し、を
繰り返しておりました。
没ネタをいくつ削除したことか。(苦笑)

そんな中、先日レッスンで、
手の痛みについて話すことがあり、
そういえば、
腱鞘炎などの”手の痛み”について
質問を受けることって
たびたびあるなぁ~、と思ったので、
今回はそのことを書いてみます。
(数回にわけてお届けします)

「ピアノを弾く者の視点から」
「私の知っている範囲で」となるので、
医学的な内容に関しては
もしかしたら間違いがあるかもしれません。
現在、もしも手に痛みなどがあり
このページをご覧になっている場合は、
きちんとお医者さんに診てもらってくださいね。

***

 むむ。何だろう?手が痛いぞ。
 まさか、これが腱鞘炎?
 思い当たるのは…、え、ピアノ!?


こんな経験ありませんか?
私もかつて手を痛めてしまったこと、
何度かあります。

整った環境で、正しい姿勢とフォームで
無理のない弾き方をし、
自分にあった曲(条件、レベル、テクニック)を
長時間ぶっ通しで弾き続けたりしなければ、
本来、手を傷めることはありません。(多分)

ピアノで手が痛くなる時、大抵の場合は
『適切ではない状態で、弾き続けた』
が原因です。
”適切ではない状態”とは…

・変な手のフォーム、悪い姿勢
・不自然な弾き方
・無駄な力み
・適切ではない椅子(や鍵盤)の高さ
・適切ではない電子ピアノの音量やタッチ

こんな感じです。

変なフォームや悪い姿勢の
代表といったら次の通り。

・不自然に指を丸めすぎ
・必要以上に指を上げて弾く
・手首が下がり(上がり)すぎ
・MP関節の支えがつぶれている
・小指側にクタっと傾いている
・前傾姿勢になりすぎ
・腰を落として(丸めて)座っている
・頭が前に突き出ている
・肩があがっている
・不必要に肘が張っている
・脇が締まりすぎ

などなど。

ピアノを弾く時に、
これらのフォームや姿勢になっていたり、
弾き方や身体の使い方に悪い癖があると
「必要な筋肉を瞬間的に使い、
同時に、休めるべき筋肉を緩める」が
適切におこなえなくなるので、
力んだ状態のままになりやすいです。

ピアノ演奏の肝は何と言っても
「無駄な力はかけない」ですが、
これが、変なフォームや姿勢、
無理のある弾き方だと
うまくできなくなるので、
手に負荷がかかってしまうんですね。
当然、改善したほうが良いので、
レッスンでは指摘することも多いですし、
身体をどう使うか、アドバイスしています。

他にも、ご自宅の練習環境に
痛みの原因が潜んでいることもあります。
椅子の高さについては、
調整するように指導しているので
問題ないかと思いますが、
床から鍵盤までの高さ!
↑これ案外、盲点です。
アップライトピアノの方はOKですが、
電子ピアノの方、補強、防音の関係で
板などの上に乗せて設置していませんか?
背板がないタイプの電子ピアノの方、
キーボードスタンドに乗せていませんか?
このような場合、床から鍵盤までの高さが
通常より高い(低い)ことがあります。
たった数センチでも、
毎回のこと、長時間となるとなおさら、
身体にかかる負荷は違ってきます。
(実際、私はこれで肘を痛めました…汗)

もう1点、電子ピアノで注意してほしいのが、
音量とタッチの調節です。
音を出して練習する場合、
夜間など周りへの配慮から、
ボリュームを絞っている方が多いと思います。
実際の生ピアノの音より
格段に小さく設定していませんか?
便利な機能ですが、この音量調節のせいで、
音が聴き取りにくくなりますし、
自分が思っているよりも
表現の幅(クレッシェンドなど)が出せずに、
いつも以上に強く打鍵してしまうことがあります。
知らず知らずのうちに、
ギュゥギュゥと押して弾いてしまったり…。
タッチのコントロールなども適切に調整しないと、
同じようなことが起こるので、
注意が必要です。

でもね、これらのことって、
弾き続けなければ、
「腱鞘炎」にまでは発展しません。
「ピアノ弾いていて疲れるな」
「何だか手が痛いな」
程度で済んでしまうし、
翌日には治っているレベル。
いわゆる”筋肉疲労”というやつですね。

しかしながら、
ピアノ始めたばかりでとても楽しかったり、
新しい曲に入って嬉しくなっていたり、
憧れの曲で”やる気MAX”だったり、
オクターブが連続するハードな曲だったり、
交流会(発表会)前で焦っていたりすると、
上記のような「適切でない状態」なのに、
弾き続けてしまうことがあるんです。
これが怖い。
痛みは身体が悲鳴を上げているサインで、
「弾き続ける」はホントに危険です。(゚Д゚;)
弾き続けたことによって
筋肉疲労から「腱鞘炎」へと
移行していってしまったら大変!

練習環境を整えて
正しい姿勢とフォームで
(できることなら)レベル、テクニック的に
無理のない曲に取り組むこと。
レッスンでフォームなどの指摘や
弾き方のアドバイスを受けたら
家でもきちんとそれに従うこと。
余裕がないと、
無駄な力が体のあちこちに入ります。
適度にリラックスを心掛けること。

そして、最も大切なのは、
少しでも痛みを感じた時は
手を休めること。
長時間、弾き続けない!
練習はできれば細切れに。
これを覚えておいてくださいね。

※どのくらいを「長時間」と呼ぶのか、
具体的な時間は、
その人のレベルや曲より異なります。
「自分の場合は?」という方は、
レッスンの時に質問してくださいね。

***

次回は、
「痛みの種類」について
書こうと思います。
ピアノを弾く人は手に痛みが出ると
「ピアノのせいかも」と
思ってしまいがちですが、
原因がピアノ以外にあることも…。

なるべく近いうちに書きあげます~。(汗)
次回の更新をお待ちください。(´ー`)ノ

手の痛みについて(2)2020/07/31

お待たせしました。前回の続き、
「手の痛みについて(2)」です。

***

美しい音色、速いパッセージ、
かっこよくお洒落なサウンドに、
ダイナミックな響き…。

この時、ピアニストの指先は、
鍵盤の上を右へ左へ素早く動きまわったり、
和音を連続で弾いたりしています。
複雑な動きを超高速でおこない
繊細にコントロールし続けているわけです。
一見、優雅でしなやかに見える
「ピアノを演奏する」という行為ですが、
実は、普通に弾くだけでも
「筋肉や腱を酷使している」
といっても過言ではないのです。

***

手に痛みが出る時、大抵の場合は
『適切ではない状態で、弾き続けた』
が原因である、と、
前回の記事に書きましたね。

今の季節にジョギングをする際、
マスクをしたまま
長時間にわたり休まず走り続けること…
これはとても危険である、と
誰もが想像できると思います。
ピアノも同じです。
ただでさえ、
ピアノ演奏という行為そのものが
筋肉や腱を酷使しているにも関わらず
『適切でない状態で弾き続けること』
が、どれほど危険か…。

手(筋肉や腱など)にかかる負荷は
適切でない状態で弾き続けると
どんどん蓄積されていき、
やがて炎症を起こすようになり、
痛みとしてあらわれます。
その悲鳴を無視して
弾き続けた先にあるのが、手の故障。

つまり、腱鞘炎です。

「腱」はひも状の繊維組織で、
骨や筋肉を繫いでいます。
そして、「腱鞘」とは、
その腱が通るトンネルのようなもの。
これが炎症を起こしたり損傷してしまうと、
中を通る腱がスムーズに通過できなくなり、
擦れることによって、痛みや引っ掛かり、
という症状が現れるんですね。

一般的に腱鞘炎と呼ばれていますが、
「バネ指」「ドケルバン病」
という病名でも知られています。
※指を伸ばす際に引っ掛かるのがバネ指
※手首(親指側)に痛みが出るドケルバン病

「使いすぎ」が主な原因ですが、
実はそれ以外にもあるようです。
更年期や妊娠、出産期の
女性に発症が多いことから、
女性ホルモンの変動が関係している、
とも考えれられています。
朝の起床時に手のこわばりを感じたり、
手を握った時や伸ばした時に
痛みや違和感を感じて、
「ピアノで痛めてしまったのかも!」と、
決めつけてしまいがちですが、
一概にそうとは言えないんですね。

例えば、
「ピアノを弾くと指の関節が痛い」
これもピアノの弾きすぎが原因か?と
思ってしまいがちですが、
指の変形性の関節症である
「ヘバーデン結節」「ブシャール結節」
の可能性があります。
指先の関節や第2関節に痛みが出て、
やがて見た目にも変形していき
指が曲がってしまう病気です。

これらは40歳以降の女性に多く、
遺伝傾向がみられると言われており、
実は、私も痛みが出ることがあって、
少~しずつ変形が始まっています。(涙)
私の母は10本の指先がすべて
あらぬ方向にむいているので、
自分も覚悟はしていますが、
これといった確実な予防法もなく、
効果的な治療法もない疾患なので、
ピアノを演奏する者にとっては
ホントに恐怖です。(´・_・`)
同じような変形性の関節症では、
他に、親指の付け根に痛みのでる
「拇指CM関節症」というものもあります。

あとは、神経が手首で圧迫されて
しびれや痛みが出る
「手根管症候群」という病気もあります。
怪我やかつての骨折の経験が
発症の原因になることもあるようですが、
スポーツや仕事などによる「使いすぎ」
でダメージが蓄積されることが
原因となることも多いです。
そして、やはり更年期や妊娠、出産期の
女性に見られることもあるため、
女性ホルモンの変動も
発症に関係していると言われています。

そして、もう1つ。
いわゆるテニス肘(上腕外側上顆炎)。
これは肘の外側に痛みが現れる疾患。
物を持ちあげたり、手をひねったり、
という動作を慢性的におこなうことで
外側上顆に炎症が引き起こされて、
発症してしまいます。
テニスをする人によく見られますが、
「雑巾を絞る」などの動作も
同じ部分を使うので、
家事をしていてなることもあるようです。
加齢とともに腱が傷んでくると、
発症しやすくなるとも言われています。
そして、「猿うで」(わかるかな??)の人は
肘に負担がかかりやすく痛めやすいので、
注意が必要です。

ちなみに私、テニス肘もやってます。
(テニスはまったくできませんが…汗)
自宅の電子ピアノで
鍵盤の高さに対する椅子の高さの調整が
イマイチだったにも関わらず放置して
本気で数日、数時間の練習をしたら
あっという間にヤラレてしまいました。(涙)
「加齢」も否めないし、
「猿うで」の持ち主でもあります~。(;´Д`)

最後に。
近年言われるようになってきた
スマホやパソコン操作による手の疲労。
無自覚のうちに手首や指を酷使していて、
腱鞘炎になることもあるので、
長時間、スマホ、マウスをいじっている方は
要注意ですよ。

***

…っとまぁ、手に痛みが出る疾患を
次々と書いてきいましたが、
「もぅ~、今回も長いッ!」
という声が聞こえてきそうなので、
そろそろまとめます。(笑)


・『適切でない状態で、弾き続ける』は
手を傷める可能性大。要注意!

・そもそも”ピアノを演奏する”行為自体が
手を酷使してる状態なので、
手を傷めるリスクは高い、と自覚しよう!

・筋肉疲労、肩こり、腕のだるさを感じたら
フォームや姿勢、弾き方を見直して!

・痛みはピアノだけが原因とは限らない。
女性ホルモンの変動や遺伝の可能性も!

・原因は何であれ、痛みを感じたら
とにかく手を休めること!

・日頃の手指のケアとして、
ストレッチやマッサージはオススメ。
使いすぎちゃった、と思った時は
軽くアイシングするのも効果的。

***

「ピアノを弾く者の視点から」
「私の知っている範囲で」となるので、
医学的な内容に関しては
もしかしたら間違いがあるかもしれません。
現在、もしも手に痛みなどがあり
このページをご覧になっている場合は、
きちんとお医者さんに診てもらってくださいね。


皆さんが、身体に無理なく
末長くピアノを楽しめますように…☆